真・鳥兜菱ノ介の憂鬱録


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読みきりデス



一応、下で隠しておきます。

読みきりです。ジャンルは?といわれると・・・

「スラッシュアクション活劇」

ですかね。

とにかく、どうぞ。



引き金狂い VS 天狗


 楠木将門。もちろん、本名ではない。本名など遠く昔に忘れてしまっていた。昼間は教育機関の清掃員・・・つまり、掃除のオジサンをしている。俺の年齢自体はオジサンという年頃ではないはずなのだが、その教育機関が中学校なので、高校生相手にはオジサンと呼ばれている。昼間はマサカドと呼ばれるただの掃除のオジサン。そして夜は、正義の味方「トリガーハッピー」として、暗躍していた。そんな、男の話である。

「オージーサーン!!」
一人の女子学生が、俺に声をかけてくる。今は朝のHRの時間のはずだ。

「また遅刻か」
長髪黒髪、どうみても身だしなみを怠っている独身男そのものである俺に、ほとんどの学生は無防備に声をかける。とにかく、迫力がないのである。自覚している。

モップを手に、女子生徒が高校の金網フェンスをよじ登る様を見守る。運動をやっているのか、はたまた登るのが慣れているのか、とにかくスムーズで、危なげない部分が殆どない。

「セーフッ!」

「アウトだ、早く教室に入れ」

走る女子生徒を見送ると、再び中断していた作業・・・清掃作業に勤しむ。

「マサカドさん、ご苦労様です」
後ろを振り向くと、そこには温和な雰囲気を持つ妙齢のレディーが立っていた。そういえばこのまえ校長に就任したばかりのこの女性は、裏では「やり手」とまで言われるほど、頭が切れるらしい。そんな雰囲気は一切ない。

「いえ、それにしても、あの子の遅刻、今週に入ってからもう3度目ですね」
また遅刻、と言ったのはこのためだ。

「えぇ、どうやら、家の事情だとかで・・・」
「そりゃ、大変だ」

俺は再び、作業に戻る。この校長先生は、生徒一人一人の事情にも、興味を持つ。本当に、いい先生だ。

都会とも田舎とも言いにくいこの地域は、所謂ごく一般・・・な、どこにでもある、普通の町だった。しかし、医療産業で大きな業績を上げた会社が大きな力を持っており、その会社の本社を中心に都市が作られ、港が整備され、そしてその周辺に住宅街が存在する。その地域から少し離れた場所に俺の仕事場でもある『東骨区』は存在する。中心となる都市の名前が『中央』。『中央』の東側にある訳ではないので、そこは理解して欲しい。つまり、名前の由来は不明なのだ。

「やや、マサカド君ではないか」
何者かが声をかける。ジャージ姿で体育教師の、清正先生だ。どうも、俺の名に興味があるらしく、縁もあるということでよく話しかけてくる。

「どうだい、一服」

清正先生は、ヘビースモーカーで、学内でたった二人という喫煙者のうちの一人だ。そしてそのもう一人が、かく言う俺だ。

学内には喫煙所はないので、わざわざ職員室の奥に設置された喫煙ゾーンまで行かねばならない。
「すいません、この辺りの整備が終わってから」

「それだと、授業が始まるんだよ」
少し、険悪なムードに・・・。

「なんてな、分かってるよ。お互い肩身が狭いよな」
少年のように、笑う。このやり取りは、俺がこの高校の清掃員になってからずっと続いていた。

清正先生が、去っていった。そろそろ、昼食の時間だ。俺も小腹が空いてきた。

「オジサンじゃん、今日はリッチだなー」
売店へ行くと、多くの高校生が我先にとパンや弁当を争っていた。

「あぁ、タバコを少し控えてるからな」
俺はそう言うと、売店の店員に、小銭を投げて、

「焼きそばパン」

と、言う。そしてその目当てのものが、俺の方へ飛んでくる。

「ナイスキャッチ」
無表情で、親指を突き立てる女性が、そこにいた。ここの高校生と並べても違和感がないほど、童顔の女性。俺と同時期に売店の店員になった。名前は『北条 巴』偽名だろう。

「相変わらずオジサンとアヤタチは、夫婦だなー」
周囲の男子生徒が騒ぐ。ちなみにアヤタチとは、一昔に爆発的に流行したテレビアニメのキャラで、北条 巴によく似ているらしい。


「大人をからかうんじゃない」

「まったく、その通り。パン売らないぞ」
その一言で、生徒たちは必死に謝罪を開始する。その様子を見届け、俺は昼食にありつく。


今日も普段通りの日常だった。そろそろ夕方だ。終業のチャイムと共に、学生たちには放課後という時間が訪れる。

俺は掃除の点検を全て終え、普段着に着替えて屋上で座って一服する。最近発売された無臭、無色の煙を出すタバコで、かなり重宝している。もちろん、姿を見られては怒られるので死角を見つけ出した上での一服だ。

「おつかれ」
「うぇ」


頬に、冷たいものが当たる。冷えたアルミ缶だった。見上げると、そこには北条巴がいた。

「気にしないで」
「?」


一瞬、何の事かわからなかったが、どうやら昼間の一件だろう。言われるまで忘れていた。

「それよりも、今夜は」
「あぁ。わかっている」

俺はタバコを携帯灰皿に入れると、立ち上がる。
「今日も貴族たちはどこかでパーティをやるんだろうな」

日が暮れるにつれ、巴の瞳に、赤いものが映るようになる。おそらく、それは俺も同じだろう。




「こちら3班、配置につきました」
アーマーと、ヘルメットで完全武装した男が数人、緊張した雰囲気を醸し出している。手にはサブマシンガンを持ち、それは日本という国では異様な光景だった。俺はその光景をそこから約5キロほど離れた場所から眺めていた。

「今回はAPの方が速かったな」
今の俺の服装はジーパンにシャツ、コートを羽織っている。隣にいる巴は、キュロットパンツにシャツというラフな服装だ。

「生贄なんて、無意味」
巴が呟く。そして、その姿が変化していく。黒い蝙蝠の翼、強固な鎧のような皮膚に覆われたその姿は、高校の売店の店員と大きくかけ離れたものだった。

彼女の正体は人工の吸血鬼と人間のハーフ。吸血鬼を始めとする人外の、ファンタジーやメルヘンの存在が、人間によって作られるようになってから10年。普通そのような存在は育った人間を改造する事によって生まれるのだが、彼女は生まれながらにして異能の存在だった。しかも、生まれてからまだ5年しか経っていない。

人工の怪物。有り得ないもの。それらを統括して『ネーバディ』と呼ばれている。ネーバディは、『名前』で在り様を表している。

俺も、肉体を変化させた。俺は人工の鬼で、体が全て強固な筋肉に覆われ、顔も全く違う仮面を着けたかのように変化し、頭頂には一対の角が生え、口には下あごから生える牙、つまりファングが飛び出す。俺の名前は『トリガーハッピー』。肉体の一部が銃器に変化し、エネルギーの弾丸を無数に放つことが出来る、破壊の存在だ。

俺たちは、ネーバディでありながら、ネーバディを狩ることを選択した。そして、それは今夜も、変わらない。俺たちのように、人々を襲わず、そして人々を襲うネーバディを狩るネーバディの組織とその組織に所属しているネーバディを、俺たちは皮肉の意味も込め、生命の樹、カバラから外れたものとして、『アウトカバラ』と呼ぶ。

AP,武装警察の装備では、人工の怪物に敵う事はなかった。ネーバディ対策チームも整備が進んでいるようだが、今回は間に合わなかったようだ。

現場は、商業ビルだった。ネーバディの数は確認できるだけで一体。この分だと楽勝だった。

「行く?」
巴。今の彼女の名前は『ネームレス』ネーバディの中ではかなり異端であるため、便宜的に名無しと付けられている。俺はアウトカバラの組織に、無理矢理こいつを押し付けられたのだ。

「当たり前だ」
俺は紫煙を燻らしていた煙草を携帯灰皿に入れる。ファングが邪魔だった。俺はその儀式を終えると、すぐさま飛び出す。人工の光で輝く街の中を、二つの影が疾走する。しかしその影を眼で捉えることのできる人間は、ほとんどいないはずだ。


「・・・アウトカバラが来たか」

ビルの内部は、まさに地獄の様相だった。五体満足で生きている人間たった一人しか存在していない、未だにうめき声が聞こえる。スーツを着た男が、俺たちをにらみつけた。

「一体何の目的で、こんなことを?」
俺は冷静に、聞いた。ビルの内部は明るく、かなり広い。何かのホールのようだった。大量殺害現場は、死臭で酷い臭いがする。

「ここのいる奴らは、ただの生贄だ。集められていたから、殺しに来た。それだけだ」
全く理解できない。・・・わけでもない。多くの人間を殺せば、ネーバディはその能力を高められるというデマが存在する。そして、わざわざ多くの人間を一点に集め、それをネーバディに知らせる職業まであるという。

「執行猶予なしだ。俺は夜叉のネーバディ、『トリガーハッピー』何発耐えられる?」この名乗り口上は別に必要はないが、俺の趣味みたいなものだ。

「『ネームレス』・・・」
『ネームレス』も、負けじと。

俺は右手の中に、銃器を出現させる。銃器から吐き出される弾丸は高密度のエネルギー弾だ。出現させたのはサブマシンガン。拳銃弾を数十発、毎分600発。弾幕を張るのに便利な銃だ。

唸りを上げ、ネーバディと思われる男へ弾丸の雨が降り注ぐ。殆ど予備動作なしの奇襲。並みのネーバディならばこれで蜂の巣だ。

「弾いた・・・」

「俺は天狗のネーバディ『サムライ・ツー』」サムライ・スリーはいつの間にかその姿を天狗に変化させていた。筋骨隆々、背中には翼、赤い顔、右手に刀を構えると、一気に距離を詰めてくる。

俺は左手にもサブマシンガンを出現させ、弾幕を張りつつ距離を取る。ネームレスは、翼を畳み、爪を出現させ、サムライ・スリーに挑みかかる。無謀に近い。

俺は武器を散弾銃へ変化させ、ネームレスに気を取られているサムライ・スリーの腕を狙い打つ。攻撃範囲の広い散弾が、サムライ・スリーの右腕を太刀ごと吹き飛ばす。

「グァァァ・・・」
そこへすかさず、ネームレスがサムライ・スリーに爪の一撃を見舞う。サムライ・スリーは崩れ落ちた。

「・・・ネームレス、無謀だぞ」
「アナタがいるから、できた」
「そりゃあ、心配されて嬉しいよ」

俺は軽く言うと、少し膨れたような仕草をするネームレス。

しかし、喰い足りない。だが同時に、奇妙な感覚を得る。
「ハッピー・・・」ネームレスは俺のことをハッピーと呼ぶ。まるでペットの犬だ。

「どうした?」
「・・・隠れてた」
ホールの物陰から、人影が・・・

「畜生っ!」
俺は悪態を付きつつ、再びサブマシンガンを出現させ、撃ちまくる。なんせ、今回はまとが多い。

「我ら、天狗のネーバディ『サムライ・ツー』シリーズ」
大量の天狗が飛び出した。五体や六体ではない。60は下らないはずだ。

「クローンか!?」しかも全員が全員、刀を片手に、俺の撃った弾丸を弾き返している。

「ネームレス!」
「大丈夫、自分の身ぐらいは」
「違う!」

俺は武器を、変化させる。こういう手合いには、有効な手段が一つだけ、ある。

「巻き込まれるなよ」
俺は両手に、巨大な筒状の武器を取り出し、撃ちまくる。一発撃つたびに轟音と、爆発の華が出現し、サムライ・ツーたちを吹き飛ばす。

「壊れる」
「それが目的だ!」

俺たちはビルが完全に倒壊する直前に、脱出する。ビルから逃げるサムライ・ツーたち。

しかし、飛行能力が低すぎる。俺はスナイパーライフルで、簡単に狙撃していく。ネームレスも飛行し、猛禽類のごとく、追撃する。


あとはAPたちの仕事だ。俺たちの行為は、犠牲や被害が大きい。しかし、やつらを野放しにする訳にはいかないのだ。もちろん、後で『アウトカバラ』の上司には絞られるだろう。それに、聞きたい事もある。だが、もう夜明けも近い。


「じゃあ、ここで解散だ。じゃあな」

俺は人目に付かないところで人間の姿に戻り、ネームレスに別れを告げる。

「ハッピー・・・」
「今はマサカドだ」

即座に訂正する。

「マサカド、今回のは、おかしい」
「あぁ、どうやら奴らも組織立って動くようになったな。狙いは、俺か・・・ネームレス、お前か」


「違う」

「あぁ、北条 巴か」
「巴でいい」




結局一睡もしないまま、仕事場でもある高校へ向かい、いつも通り仕事をこなす。不意に

「マサカドさん」
温和な雰囲気を持つ妙齢のレディー、校長だ。

「『中央』で、ビルが倒壊したようです」
「あぁ、そのようですね」
「後で、校長室へ」


俺は、絞られる事になりそうだ。

絞られ、売店へ向かう。もう昼過ぎだ。売店には生徒はいない。

「ヤキソバパン」
俺は小銭を投げる。パンが飛んでくる。

「ナイスキャッチ、マサカド」
「ナイスキャッチ、巴」


それが、名のある俺たちの、日常だ。


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